『「お上がり お下がり」さん』


「毘沙門」さんの愛称で親しまれるのは、卯辰山に鎮座していた毘沙門さん(多聞天社-東北「鬼門」を守護する武神)を卯辰八幡宮の境内にお遷したためです
卯辰山には、今でもその社が、奥宮として鎮座し、宇多須神社の春の祭礼(5月2-4日)が終わって、梅雨時期の6月20日前後の天気の良い日を選んで、1年に1度「毘沙門」さんが、奥宮へお上がりになるもので、町内を巡って山へ登っていくことから「お上がり」と呼ばれます
7月下旬の吉日に奥宮のお参りがあります
これと反対に、「お下がり」神事は、秋祭り前の9月20日前後のやはり天気の良い日に、奥宮より宇多須神社へお帰り戴くのに卯辰山を下ることから「お下がり」といわれております

現在も「お上がり、お下がり」は、町が静かになる夜7時30分頃を見計らって、神社でお祓いを受け、白い衣装に身を包んだ年男や厄年にあたる人達にかつがれたお神輿を中心にして、前には道を照らす提灯、毘沙門さんのお使いのムカデの幟旗、行列を知らせるために打ち鳴らす太鼓、そして氏子たちはそれぞれに提灯を持ち、浄らかな闇夜のみちすがら各家々に向かって「お上がりじゃぞ ! 」「お下がりじゃぞ ! 」と叫びながら進みます

神輿の行列が沿道の町にさしかかると、待ち受けた人達は神輿に賽銭を捧げて家内安全を祈り、ずっと行列が過ぎるまで手を合わせています
始まってから約250年という長い年月の間、人々によって守り伝えられて来たこの神輿は、地元の氏子の人達はもちろんのこと、梅雨入りと秋の訪れを告げる祭りとして、広く金沢の市民に親しまれています



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